2011年度　後期第７回　細胞生物学セミナー

日時：12月6日（火）15:30~

場所：総合研究棟6階 クリエーションルーム

Brassica rapa L. seed development in hypergravity

Musgrave, M. E., Kuang, A., Allen, J., Blasiak, J., van Loon,（2009）

Seed Sci. Res., 19: 63-72

過重力下における、カブ種子の発達

植物の成長において重力は重大な役割を担っている。花が自家不和合性であり、手で受粉させることにより種子発生のタイミングを調節できるカブは、研究において都合の良い植物である。以前の宇宙実験でカブの種子発達において微小重力が影響を及ぼすことが示された。

そこで筆者らは重力環境が長角果の微小環境の調節を介して、種子発達に影響を及ぼすという仮説を検証するため、種子周囲のガス調節を行った上で種子発達に過重力が与える影響を調べた。in vitroでの長角果成熟系を用いて、４Gもしくは１G環境下において形成させた，種子の成熟過程の１６日目に長角果内部のガスを採取した。その結果４G下においては長角果内部で１G下より二酸化炭素濃度は高くなり、酸素濃度は低くなった。また４G下において得られた胚の乾燥重量は１G下において得られたものより重くなった。この結果に加え、４G下において長角果内部で二酸化炭素濃度が高くなったということ事実は、過重力環境において胚が酸素をより多く入手でき代謝活性が高まったためであるという仮説を裏付けると考えられる。その結果、過重力環境においては胚がより大きなサイズとなり、またより発生段階が進んだと考えられる。

大口径遠心機に乗せられたチャンバーの中で１６日間、２Gもしくはおよび４G下で育てられた植物において受粉と初期胚の発生を調べた。手で受粉させるために、ローターは毎日短時間止められた。発生中の植物胚は４G下で有意に重くなった。種子におけるデンプンと可溶性炭水化物の蓄積量の減少は４G下で１　 G下より２日早い段階で起きた。一方，脂質蓄積量は４G下で増した。

カブの胚発生は繊細な酸素濃度のバランスによって、微小重力で遅くなり、過重力で加速されると考えられた。筆者らの実験結果は、月や火星といった地球より弱い重力下における、植物の種子サイズと貯蔵量組成を予測する際に、大きな意味を持つ。さらに、植物のガス関係に重力が基本的な役割を果たすという考えは、重力が生物の進化に果たす側面に関心がある科学者にとって重要な考察である。

興味をもたれた方は是非ご参加ください。　久野　馨子